一晩でどれくらい積もったのだろうか?
ホテルガビンの快適な一夜は、この日の朝の景色からは想像もつかないほど快適だった。
次第に天気がよくなる予報。
しかし、完全に自然に戻っている。見事に降り積もったものだ。

バンザイラッセルでスタート。平地でばんざい。半端じゃない。
当然ながら、全く進まない。
気の遠くなるようなラッセルを繰り返して、ようやく南尾根P4。
ここから大キレットになっていて、懸垂で下りなければならない。

黒部の底に下りた時のことを思い出し、万全の体制で下降する。同じミスは繰り返さない。
出だしはブッシュの急斜面。
こんなところは長い懸垂はハマる。シングルでこつこつ下りる。
だんだん傾斜が出てきて、最後は完全に空中懸垂。
結局3ピッチでコルに下りることができた。大きなトラブルはなかったけど、
重荷を担いでの懸垂は体力を奪われるものだ。

その先もラッセルは続く。


結局最後はスコップで雪洞3つ分くらいの雪をかき分けながら、小ピークを超えたところで時間切れ。

その先もしばらくリッジが続きそうな感じだったので、2100mの地点のリッジ上にテントを設営。

明日の晴天の予報。本日の獲得距離、地図上で1.5cm。
黒部ダムが見える。
ダムがなかったら、と想像してみる。もっとこの山は深かったに違いない。
見渡す限り山しか見えないこの場所で、僕はこの上ない幸せとちょっぴりさびしさを感じた。
2月29日
非常によい天気。
ここ黒部において何が一番快適か、と聞かれたら「乾燥している状態」と答えるだろう。
2日続けての晴天のおかげで、ウエアその他は完全にリセット。気持ちがいい。

しかし、天気予報は明日からの悪天を告げている。
今日のうちにどこまで進むことができるか。
昨日のうちにほぼ核心は抜けていたので、いいピッチで進む。
雪もあっという間に締まってくれた。黒部の雪は本当に不思議だ。
出発してしばらくはアップダウンのある雪稜。苦労の割には距離は出ない。
しかし、P2あたりからロープなしで行動できる箇所が増えてきて、ますますペースが上がる。
P1過ぎたあたりから完全にロープを解き、締まった雪に助けられてあっという間に黒部別山南峰に到達。
ここでようやく剣が見えた。

鳥が翼を広げたようなその姿は本当に美しい。

いよいよここまでやってきたか。
まだ時間はある。天気もいいので進めるだけ進むことにした。
ハシゴ谷乗越との分岐から八つ峰の4の沢に向けて、谷の中を一直線に下降。

剣沢もほぼ完全に雪に没していたので、簡単に渡ることができた。
八つ峰3稜を少し登った台地にテントを張る。長い一日だった。
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